震度 7 とは「どういうもの」なのか?

計測震度は地震波の加速度・周期・継続時間というパラメータをもとに決められますが、その算出方法を詳しく知りたい方は気象庁の 計測震度の算出方法 という記事をご覧になってください。
これをもう少し分かりやすくしたのが 震度と加速度 にある「均一な周期の振動が数秒間継続した場合の周期および加速度と震度 ( 理論値 ) の関係」というグラフです。これを簡略化して模式的に表わしたものを下に掲げておきましょう。

このグラフを読み取ると、震度 7 になる加速度はおおよそ下のような値になることが分かります。

  • 周期 0.1 秒の場合は約 2700gal 以上
  • 周期 1 秒の場合は約 600gal 以上
  • 周期 1.5 秒の場合は約 500gal 以上
  • 周期 10 秒の場合は約 2000gal 以上

私たちは「震度 = 地震の大きさ」という連想から、つい、地震がもたらす「力」の大きさ、すなわちその「最大加速度」に着目しがちですが、上に見るように、震度と加速度は一対一には対応しません。
そもそも、震度とは「地震がもたらす力の大きさ」を表わしたものではなく、「地震がもたらす被害の大きさ」を表わしたものなのです。

さきほどのグラフをもう一度見ていただきたいのですが、この曲線は周期が 1 秒をちょっと超えた 1.5 秒のあたりに「底」があります。この「底」とは「最も小さな加速度で震度 7 に相当する被害がもたらされる」領域を表わすものです。
これが 1.5 秒あたりにあるのは、「周期 1 秒から 2 秒の間の地震が最も大きな被害をもたらす」ということを私たちは経験的に知っているからです。
つまり計測震度とは、周期 1 秒から 2 秒の間――このような地震波は「最も警戒すべきもの」という意味から「キラーパルス」と呼ばれる――が「底」になるようにこしらえたものなのです。

となると次の疑問は「震度 7 がもたらす被害とはどういうものなのか」になりますが、これについては、気象庁の 震度について という記事の中で次のように解説されています。

  • 耐震性の低い木造建物は、傾くものや、倒れるものがさらに多くなる
  • 耐震性の高い木造建物でも、まれに傾くことがある
  • 耐震性の低い鉄筋コンクリート造の建物では、倒れるものが多くなる

ご覧の通り、表現としては非常に曖昧です。「明快な表現」ということでいえば、1995 年まで採用されていた「家屋の倒壊率が 30% 以上」の方がずっと上でしょう。
「速報性」という観点から計測震度が導入されたわけですが、それと引き換えに、「どの程度の被害」と問われると、上のような曖昧な表現をとらざるを得なくなったのです。
それでも、計測震度が地震のもたらす被害の相対的な度数を正確に――そのようなものをどこまで「正確」に表わすことができるものなのか、私にはよく分かりませんが――反映しているのならばどこからも文句は出ないでしょう。
しかしこれについても、いくつかの疑問が出されているようです。

東日本大震災の折に宮城県北部の栗原市で震度 7 が観測されたことは先に紹介しましたが、にもかかわらず、栗原市では一人の死者も行方不明者も出ませんでした。また、周辺の「震度 6 強」の地域と比べて特に建物の被害が大きかったという事実もないようです。
さらに、2007 年の新潟県中越沖地震で震度 6 強を記録した柏崎市の記録と比較すると、建物の被害ははるかに少ないらしい。
これについては、「建物への影響が小さい、揺れの周期が短いタイプの地震だったため」とされているようですが、だとすると、計測震度の算定方法そのものにまだ多くの課題が残されていることになります。

前へ | 1 | 2 | 3 | 4 | 次へ