では具体的ににどうするのか?

ここまでお読みいただいて−−あくまでも、ここまで辛抱強く付き合っていただいたということを前提にした話ですが−−限界状態設計法がどんなものなのか、ということを何となく分かっていただけたでしょうか?
少なくとも私は、数冊の本を横に置きながらここまで書き進めてきた結果、限界状態設計法がどんなものなのかについて「何となく分かった」ような気がしました。
ですから、ここまでお読みになった方が、その「何となく」のレベルにすら達しなかったとすれば、それは私の説明が拙かったか、あるいは私の理解が足りなかった(この両者は結局同じことなのかも知れませんが)ということになります。

それはさておき、冒頭にも述べたように、この文章の目的は限界状態設計法に関する大雑把な見取り図(たぶん、縮尺 1/10000 くらいの)を差し出すことにあったのですから、もし「何となく分かった」のであれば、それでほぼ目的は達せられたことになります。
ですから、本来は前項の最後に「完」と書くつもりだったのですが、しかしこのまま終えてしまうと、何か途中で放り出してしまったような印象を与えてしまうのではないかという危惧を抱きました。
どいうことかというと、ここには「では具体的ににどうするのか?」という話がまったく抜けているからです。
(それから、いま思い出しましたが、冒頭で紹介した「耐力係数」「荷重係数」が具体的に何なのかについては、ここまで全くふれてきませんでした。)

そこで予定を変更し、そのあたりの話を最後に付け加えておくことにしたのですが、ただし先に述べた通り、限界状態設計法は構造計算の具体的なノウハウを指南するものではありません。
ですから、もしそういうものが欲しいのであれば、「限界状態設計法という考え方に基づいて作られた○○設計指針」という形で公表されたものを探すしかないのですが、中でも最も入手しやすいのは、日本建築学会「鋼構造限界状態設計指針・同解説」という本 注) でしょう。
そういうわけで、以下、この本にしたがった具体的な設計の手順(のアウトライン)を手短に紹介しておくことにします。

注)
私の手元にあるのは 1998 年版ですが、近々 2010 年版が刊行されるとの情報を得ています。しかし事前のアナウンスによれば基本的な路線変更はないとのことですので、 1998 年版を元にした話をしても特に問題はないと思われます。なお、鋼構造以外のものも含まれた「建築物の限界状態設計指針」( 2002 年・日本建築学会)という本もあるにはあるのですが、こちらは入手するのがきわめて難しい状況です。