運動エネルギーの基本式

エネルギー(正確には「運動エネルギー」)の大きさは、それがなした「仕事」の大きさによってあらわされます。この「仕事」の大きさとは、「作用している力に、その作用方向に物体が移動した距離をかけた値」です。つまり、作用力を F、物体の移動距離を s とすれば、なされた仕事の大きさは F・s です。
これがエネルギーの大きさそのものをあらわすのですから、結局、エネルギーの大きさは「力×距離」という次元を持つことになります。建築物の設計では kN・m という単位が用いられることが多いようです。

ところで、ここで非常に重要なポイントがあります。
それは、物体が距離 s を移動するには、必ず何がしかの時間がかかる、ということです。では、力 F が一定の時間にわたって作用し続けると、その結果どうなるか?
力とは質量に加速度をかけたものであり、加速度とは速度の増分に他なりませんから、加速度が一定の時間にわたって作用し続けると、その結果、速度が増えるのです。

下の図は、静止している物体(速度が 0 )に加速度 a が作用している状態を、縦軸に速度 V ・横軸に時間 T をとったグラフであらわしたものです。加速度 a はグラフの「傾き」であらわされ、ここでは一定ですので、グラフそのものは直線になり、時刻 t における速度 v は a・t です。

ここで、時刻 t までにこの物体が移動した距離がどれくらいになるかを考えてみます。
下図にあるように、微小な時間間隔 冲 の間に移動した距離は、その時の速度 v' に 冲 を乗じたもの、つまり 冲 と v' が作る長方形の面積に相当します。時刻 t に達するまでに移動した総距離はこれの累積値になりますから、最終的には、このグラフと横軸で囲まれた下図の塗りつぶし部分の面積に等しいはずで、結局、移動距離 s は下図右のような式であらわされます。

この時に物体に作用している力 F は、物体の質量 m に加速度 a を乗じた値です。さらに、 a と v の関係はすでに分かっていますので、これらの関係を用いて上の式を変換すると下のようになります。

ところで、エネルギーとは力に距離をかけたもの、つまり上式の最後にある F・s の値そのものですから、結局、この物体が受け取ったエネルギー E は、物体の質量 m と速度 v を介して下のようにあらわさることになります。

   

これが運動エネルギーと速度の基本式です。運動エネルギーは速度の 2 乗に比例するのです。