1. 節点とはなにか?

 なぜ「変位法」というのか?

変位法とは「変位をもとめる方法」です。これはいたって明快です。
いや、そうはいっても「応力」だって出ますよね、という反論があるかもしれません。しかし、変位が分かれば応力は自動的にもとまることになってますから、応力は変位の後についてくるオマケみたいなものです。
変位法の実質的な計算は「変位をもとめる」ことに費やされている、ということをまず頭に入れておいてください。

で、その「変位」とはなんのことかというと、これは「節点の変位」です。したがって、変位法で取り上げるべき最初の話題は「その節点とはいったい何なのか?」になります。

 節点とは何なのか?

節点とは何なのか、といきなり構えられても困りますが、とりあえず、「広辞苑 第五版」では下のように説明されています。

構造物の骨組を構成する部材の結合点

この言葉がいつごろからどのようにして使われだしたのか、私はよく知りませんが、英語の Node の翻訳語であることは間違いないでしょう。Node(ノード)、つまり節ですから、多少アカデミックな用語を使えば「結節点」といったところです。もしかすると、「結節点」がつづまって「節点」になったのかもしれませんが、それはともかく、「結節点」とはようするに「つなぎめ」ですから、先ほどの広辞苑の説明と合致します。

「つなぎめ」というと、私たちの商売柄、つい「柱と梁の接合部」「梁の継ぎ手部」のようなものを連想しがちですが、しかし変位法でいう「節点」はそれとは違います。これはようするに「点」であって、どういうことかというと、「大きさを持たず、位置情報だけを持つ観念上の存在」です。つまり「実体」をもっていません。
その証拠に、私たちは「節点の大きさはどの程度にしよう」とか「節点の材質をどうしよう」というようなことで悩んだりはしません。そういうことで悩むのは、もっぱら部材という「実体」の方に限られているのです。

コンクリートや鉄の塊を指差して「この部材は・・」ということはできるが、同じように何かを指差して「この節点は・・」ということはできない。節点が実体をもたない、というのはそんな程度の意味ですが、しかし変位法という解析手法にとっては、節点はたしかに「ある」のです。あるいは「あることにする」のです。
なぜそんなことがいえるのかというと、変位法の上では「部材はあるが節点が一つもない」という状態はありえないが、「節点はあるが部材が一つもない」という状態なら「ある」からです。
下の図を見てください。


なんかヘンな図ですが、これは、それぞれの方向(縦・横・回転)にバネが取り付いた節点(黒い正方形)に何がしかの力が作用している、という状態をあらわしたものと考えてください。この図が言わんとしているのは、変位法とは「節点の変位をもとめる方法」なのだから、これを解析すれば、「この力によってこの節点がどれくらい変位するか」が分かるはず、ということです。
変位法では、この図のような状態を「節点に力が作用している」「節点が押されている」と考えます。「バネが押されている」ではありません。あくまでも節点の側を主役に据えますから、ここでのバネの役目はなにかというと、「節点が押される時にそれに抵抗するもの」です。

ここで、この「バネ」を「部材」に置き換えてみると以下のようなことが分かります。

節点の側からみた場合、バネも部材も「節点が押される時にそれに抵抗するもの」で、結局これらは「同じもの」である。

したがって、上の図で「節点にバネが取り付いてそれを支えている」ように、部材もまた「節点に取り付いてそれを支える」役目をもちます。この関係をあらわしたのが下の図です(青い丸印は、節点にたいする部材の「取り付き方」の表現で、いわゆる「剛接合」とか「ピン接合」とかいわれるようなものをあらわすと考えてください)。


ここまでの話をまとめるとこんなふうになります。

1.

変位法とは「節点変位を計算する方法」で、その主役は節点である。

2.

節点は位置情報だけをもつ実体のない存在、もしくは「仮想の実体」である。

3.

その節点の位置情報(つまり節点変位)を決定するのが部材という「実体」である。

ですから、ここで何をすればいいのかというと、節点変位という「仮想の実体」と部材という「実体」の関係を明らかにすればいいわけです。変位法のアイディアとは、まさにその一点につきるのです。

2. 節点の自由度