断面二次モーメント

前項で紹介した断面一次モーメントの「一次」とは何なのかというと、これは面積に長さを「一回だけ」掛けているからです。面積とは長さを二回掛けたものですから、結局、断面一次モーメントは [長さ] 3 という次元をもつことになる。
これに対する断面二次モーメントとは面積に長さを「二回」掛けたものです。
したがって、こちらは [長さ] 4 という次元をもつことになる。ただそれだけなのですが、この場合に何が大きく違ってくるかというと、( 長さが負であってもそれを二回掛ければ正になるので ) 断面二次モーメントの値は必ず 0 より大きくなるのです。

図心回りの断面一次モーメントは 0 になるが、断面二次モーメントの方は 0 にはなりません。
この「図心回りの断面二次モーメント」とは、その断面がどこにあるかに関係なく潜在的に保持しているポテンシャルのようなものと考えられますから、回転軸から L の距離にある面積 A の物体の断面二次モーメントは下の式で表わされるはずです。

断面二次モーメント = 図心軸回りの断面二次モーメント + A × L2

図心軸回りの断面二次モーメント ( Iox 及び Ioy ) の一般的な表現を下図左に、任意の回転軸に対する断面二次モーメント ( Ix 及び Iy ) の考え方を下図右に示しました。

左側の図 ( 図心軸回りの断面二次モーメント ) をもう一度見てください。
ここで、「 Iox の方が Ioy よりも大きいはず」ということは簡単に察しがつくでしょう。なぜなら、回転軸から遠い部分に断面積をもつものほど断面二次モーメントが大きくなるはずだからです。
本当にそうなのかどうかは XY 座標軸を少しずつ回転 ( もちろん図形の方を回転させても同じ ) させながら断面二次モーメントを逐一計算してみればいいのですが、しかしそんな手間をかけるまでもなく、以下のようなことが分かっています。

どこかに対称軸をもつ断面では、その軸に関する断面二次モーメントが極大値または極小値を与え、それと直交する軸に関する断面二次モーメントが極小値または極大値を与える

これが主軸と呼ばれるもので、最大値を与える方を強軸、もう一方を弱軸と呼ぶ――たぶん、このあたりも「何をいまさら」の話だと思いますので、ここでは長方形やH形鋼の断面ではなく、もう少し複雑な「山形鋼 ( アングル ) 」の断面を取り上げてみましょう。

下図にあるように、この断面の対称軸は斜め 45 度方向の u 軸にあります。これが主軸の一つですから、もう一つの主軸は図心を原点としてこれに直交する v 軸になるはずです。ではこの時、どちらの軸回りが「強軸」になるか?

形鋼の断面表などの凡例図に楕円形が描き込まれているのを見たことがあると思います。上の図にある青い線です。
ここにある通り、図心が楕円の中心になっていますが、この中心から任意の傾きをもつ直線を引いて楕円との交点を求めれば、中心からその交点までの距離が ( その傾きをもつ座標軸に関する ) 断面二次モーメントの大小を表わすのです。
この場合、それが最も大きくなるのは楕円の長径に相当する iu で、最も小さくなるのは短径に相当する iv になる。ここから、u 軸回りの断面二次モーメントが極大値、v 軸回りの断面二次モーメントが極小値になることが分かります。
これが断面二次半径と呼ばれる値で、一般に小文字の i という記号が使用されます。

と言っても、この値は断面二次モーメントに直接比例しているわけではありません。断面二次モーメントの「平方根」に比例するのです。なぜそうなのかというと、そのような操作を施すと図心回りにきれいな楕円を描くことができるからですなのですが、このあたりの理論は略し、以下に計算式だけを掲げておきます。

i = √ ( I / A ) = √I / √A

ここでは、断面二次モーメントの平方根 √I に対する比例定数として 1/√A という値を使っていることになります ( A は断面積なので、回転軸の向きに関係なく一定値をとる )。結果としてこれは [長さ] の次元を持つことになるのですが、この式をさらに変形すると

I = i 2 × A

になる。見ての通り、これは断面二次モーメントの定義そのものです。
つまり、i を既知とした時の断面二次モーメントは、「図心から i だけ離れた位置に全断面積 A が集中して存在している」という仮定のもとに得ることができるのです。

前項で説明した通り、偏心率の検討に使用する「重心位置」「剛心位置」は「断面一次モーメント」の考え方に基づいたものですが、偏心率の値そのものの計算には「断面二次モーメント」あるいは「断面二次半径」という値が使われています。
まず、「剛心回りのねじり剛性 KR 」という値が下のように定義されている。

KR = Σ( Kx・y2 ) + Σ( Ky・x2 )

ここにある Kx 及び Ky はそれぞれ XY 方向に関する耐震要素の水平剛性ですが、これは「断面積」に置き換えることができます。また、x 及び y は剛心から各耐震要素までの X 方向と Y 方向の距離ですが、「剛心」とは「剛性の重心 ( = 断面の図心 )」にほかなりません。
ようするに、上にあるのは「断面二次モーメント」を表わす式で、「剛心回りのねじり剛性」とは「図心回りの断面二次モーメント」のことなのです。
( ただしここで考えているのは、下図にある通り、この画面に直交する方向に回転軸があり、画面に平行な方向にXまたはY方向の力が作用しているものとしたものなので、それぞれの力による曲げモーメントを加算しています。 )

ということになれば、ここには当然、剛心を中心とした「断面二次半径」の楕円を描くことができます。それが偏心率の規定にある「弾力半径 re 」という値で、X 及び Y 方向に関して以下のように定義されています。

rex = √ ( KR / ΣKx ) , rey = √ ( KR / ΣKy )

この KR は I に、ΣKx と ΣKy は A に置き換えることができます。
ねじり剛性 ( = 断面二次モーメント ) が大きいほど、あるいは弾力半径 ( = 断面二次半径 ) が大きいほど回転剛性が大きい ( = 曲げ変形しにくい ) のです。


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