はじめに
以前、小社で販売している変位法による応力解析プログラムにかんして、「計算結果がどうもおかしい、このプログラムには欠陥があるのではないか」という内容のサポート申し込みが来たことがあります。そこには下のような骨組の図が添えられていました。
これに対し、こちらからは「これは不安定構造、もしくはそれに近いものです」というような内容の返事をしたと記憶していますが、さらに返信があり、「これは三ピンラーメンと呼ばれるちゃんとした骨組で、不安定なはずがないでしょう」というようなことが書かれていました。
ところで、上の二つの図を見比べて、結局は同じことと思う方は意外と多いのではないでしょうか?
つまり、私はここで何を言いたいのかというと、これらを結局は同じことと考える立場がフツーであるとするならば、明らかに、フツーじゃないのは「変位法」の側である、ということです。 ひと昔前、つまり構造計算が手作業で行なわれていた時代には、「長期応力は固定モーメント法で、地震時応力はD値法で」というのが応力計算の定番でした。ここでもやっぱり「フツーじゃないこと」が起きないわけではありませんでしたが、しかしその理由はいたって明快です。「フツーじゃないことをやった」からで、これは「計算ミス」と呼ばれたりします。もう一度よく見直すか、あるいは頭を冷やして最初からやり直してみなさい、ということで一件落着です。
しかし状況は変わりました。今では、応力計算といえば「コンピュータプログラムを使って変位法でもとめる」のがごく当たり前です。キーボードを叩くなりマウスボタンを押すなりすればたちどころに答えが得られるわけですから、これは楽チンです。
ということです。その一つの例を先にあげました。
このコラムの表題は「知っておきたい変位法」ですが、ここで何を「知っておきたい」のかというと、それはここまでの話からすでに明らかでしょう。
です。 |