Office 2013 にさわってみた

家電量販店に立ち寄った折にマイクロソフト社のオフィス製品の最新版 Office 2013 を購入した。これは「オフィス史上最も画期的な製品」と喧伝されているが、まず手にして驚くのは外形が異様に小さいことである。ハガキくらいの大きさで、厚さも 1cm 足らず。
案の定、中にディスクは入っておらず、数枚の紙切れが入っているだけ。そしてその内の 1 枚にライセンス認証用のキーが印刷されている。ようするに、これは実体としては「ダウンロード版」で、店頭販売用に小さな箱を用したに過ぎない。これは「店頭販売しているダウンロード版」なのだった。
さらにその箱をよく見ると、小さな字で「本製品は同一ユーザーが使用する合計 2 台までの PC にインストールできます」という文章が印刷されている。それ以上の説明は何もない。マイクロソフト社がこのようなシステムを取り出したのはたしか Office 2003 あたりからだと思うが、このあたりについては「すでに皆さんご存知の通り」ということなのだろう。
いずれにしても、このような販売形態が「これからのパッケージソフトのあり方」を示唆していることは間違いないだろう。

Word や Excel のような単体版の他に、それらをセットにしたスイート製品が販売されているのはこれまでと変わらない。
ここには Personal ・ Home & Business ・ Professional という 3 つのエディションがあるのだが、このうち、( 旧版のユーザーを対象にした ) 「アップグレード版」が存在するのは最上位の Professional だけ ( しかも数量限定 ) で、その他はすべて「通常版」だけになっている。これまではすべてのエディションについて「アップグレード版」と「通常版」が用意されていたはずだから、これは大きな違いといえる。
私たちはこれまで、ソフトウェアのバージョンアップサービスについて「あって当たり前 = なければ欠陥商品」というように何となく習慣的に思ってきたが、このあたりもこれから少しずつ変わっていくのかもしれない。

正直なところ、私は Word を少しさわってみただけなのだが、そもそもここで「新しい Word はどのように変わったのか」というような解説をするつもりはないし、そういうことが出来るわけでもない ( そういう情報なら書店やネット上にたくさん出回っている )。
ただし、「ここで一番変わったことは何なのか」と聞かれたならば、これについては私でもかなり自信をもって答えることができる。
それは、このプログラムが「ローカルディスクではなく、SkyDrive 上でデータを読み書きすることを標準的なスタイルにしようとしている」ことである。
この SkyDrive というサービス――マイクロソフト社が無償で提供しているストレージサービスで、サインインすれば 7GB まで誰でも自由に使うことができる――は以前からあったもので、ローカルディスクのファイルをここにコピーしておけば他の PC からそれにアクセスすることはできた。しかし、プログラムの側からそのファイルを直接開いたり保存したりすることはできなかった。
このサービスにより、自宅であれ会社であれ出先であれ、いつも同じデータに直接アクセスできるようになるわけで、そのメリットは非常に大きいと思う。これがオフィス製品 ( だけに限らないかも知れないが ) の標準的な利用形態になっていくのは確実であろう。

それからもう一つ、個人的に注目しているのは、Word で PDF 文書を開いて編集したり保存したりすることができるようになった点である。これまではそれなりのお金をかけて何らかのアドインを組み込まなければできなかった機能が最初から標準で装備されているのだから、これは大変うれしい。
ただし、読み込んだ PDF 文書を完全な形で Word の文書に変換するのは難しそうである。私自身、まだ使い始めなので何ともいえない部分があるが、このあたりは折をみて報告したい。

( 文責 : 野家牧雄 )