柔剛論争・資料集
関東大震災後の大正 13 年から昭和初期までの約 10 年にわたって繰り広げられた柔剛論争は、たんに建築界のトピックにとどまらない、ある種の「社会的事件」であったと言えますが、その「熱気」のようなものを知るには柔剛両派の論文を直接のぞいてみるのが一番でしょう。
幸いなことに、これらの論文は現在インターネット上に公開されていて誰でも読むことができるのですが、しかし残念ながら、旧字の文語体で書かれているため、現在の私たちにとって、お世辞にも「読みやすい」と言えるような代物ではありません。よほど特別な理由を持つ人でない限り、その全文に目を通そうと思う人も、あるいは実際に隅々まで目を通した人もいないはずです。
そこで、これを何とか少しでも読みやすくするために、目ぼしい論文の現代語訳を試みました。
現代語訳とは、一つは旧字と文語体を現代の表記と言葉遣いにすること、そしてもう一つは、論文中に現れる用語を現在使われているものに置き換えることを指しています(たとえば、「振期 → 周期」「共鳴 → 共振」など)。
ところで、「剛派」である佐野利器や武藤清の書いたものは、(さすがに東京大学の先生だけあって?)上記の作業を行えばほとんど自動的に現代語訳が出来上がます。
一方、これに対する「柔派」の真島健三郎の論文は、勢い込んで書いているせいか、途中で文章のつながり方が分からなく部分が所々あって、それをそのまま現代語に移したのではどうも調子が悪い。そこで、こちらについては、文意を損ねない範囲で語順を変更したり、あるいは明らかに本筋に関係ないと思われる語句を一部削除したりした所があります。その点はご承知おきください。
(なお、念のためにお断りしておきますが、これは別に真島健三郎の論文を貶めたものではありません。実際に見ていただければ分かりますが、読んでいて圧倒的に面白いのは真島さんが書いたものなのです。)
論文の時系列にしたがったリストは以下の通りです。これらはすべて PDF 文書になっており、論文名のリンクをクリックすると別ウィンドウに表示されます。
(文責 : 野家牧雄)
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